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健康で幸せに生きることために ー50代から見直す、将来のための正しい食習慣

更新日:2020年4月22日


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栄養の視点 日常のなかで健康づくりのきっかけをつくる


「健康卓球」の賛同者であり、日本栄養士会会長の中村丁次先生に健康で生きるための栄養と「健康卓球」の取組について伺いました。



健康意識の二極化が健康格差を生む

あまり健康に関心のない人に興味を持たせる仕組みが大切


―「健康卓球」は、高齢や障害のある人にも楽しめる新しい卓球の楽しみ方で、生涯にわたって卓球を楽しんでもらおうという活動です。はじめに、日本の高齢者の健康課題について教えてください。

今の高齢者は、健康意識が高く健康に対して積極的な人と、健康にあまり関心がない人に分けられます。健康意識の高い人は、毎日の食事に気を配り、スポーツジムに通い、規則正しい生活を送ります。外出して人と交流し、ときには健康セミナーやイベントに参加します。病気の早期発見のために定期的に検診を受診し、病気があっても、病気と上手につきあいながら、健康な毎日を送っています。おそよ全体の2割程度ととらえています。


一方、残りの人は、そもそも健康について学んだり、行動を起こしたりする意欲が低く、あまり外出する機会がありません。おそらく健康イベントにでかけることも少ないでしょう。自治体や企業がさかんに開催している健康セミナーは、残念なことに一番知らせたい人に来てもらえないというわけです。

そのため、興味関心のない人に、知ってほしい情報をいかに届けるか。これが健康づくりにおける最大の課題です。


解決策のひとつは、日常の生活シーンに健康づくりを組み込むという発想です。たとえば、ふだんの買い物にでかけたら、健康になる情報や健康になる場があったから試してみようかなと思わせるのです。



日常生活のシーンに健康づくりを組み込ませる


―「健康卓球」の取り組みの一環として、三重県桑名市の旧公民館に「卓球珈琲(カフェ)」をつくりました。







町内で卓球ができる場をつくるというのは面白いですね。卓球場は、ほかのスポーツに比べて、広い場所もメンテナンスのお金もかからない。誰でも若いころに経験している。気軽にできるということが大切です。

町内の公民館というなじみのある場所に「卓球」が組み込まれれば、日常生活の中で健康づくりのきっかけができます。さらにカフェがあれば、人が集まり、交流する場ができますので、出かけることが苦にならず、外出する機会が増えてきます。卓球はスポーツでゲーム性もありますので、閉じこもりがちな男性の参加も期待できそうです。



「食べ過ぎ」と「食べられない」が混在。65歳からはメタボ予防よりも、フレイル対策で栄養をとるべき


―実際に、桑名の「卓球珈琲(カフェ)」では、卓球サロンで住民が交流しています。卓球は多世代で一緒に楽しんでいますが、栄養の摂取では世代による違いはありますか。


40歳から始まるメタボ対策は生活習慣病予防として重要であり、多くの人が肥満

を気にするようになりました。その意識は60歳くらいまでは良いのですが、60歳代の半ばになったら生活習慣病のリスクと介護のリスクを天秤にかけ、適切な栄養管理が必要となります。痩せている人が高齢になっても「食べすぎない」食生活を続ければ、活動や筋力が低下するフレイル(虚弱)が問題となってきます。

年齢や状況によって適切な栄養の考え方を変える必要があります。日本は、肥満や生活習慣病の「食べ過ぎ(過剰栄養)」と、若い女性、妊産婦、高齢者、傷病者の「食べられない(低栄養)」の状態が混在する「栄養不良の二重負荷」の課題に直面しています。3歳から15歳の成長期、妊娠出産期、65~80歳の高齢期はしっかりと食べて、健康な生活を維持することが重要です。



簡単でもいいからちゃんと食べる、そして元気になる。

将来のために50代、60代から正しい食習慣を


―高齢になると「食べる」ことが重要なのですね。食べ方のポイントなどはありますか。


一言でいえば、食べることです。手作りでなくてもいいのです。コンビニエンスストアやスーパーのおそうざいでもいいから、ちゃんと食べることです。

例えば、何種類もの薬を服用している人は、だんだんと味覚が鈍くなってきます。味がわからないとおいしくないから食べたくなくなる。それでも薬を飲むから、胃腸を痛める。さらに食欲が低下して栄養失調になってしまう、という悪循環が起こります。


この悪循環を断ち切るには、やはり「食べる」ことです。食べていれば、たとえ病気は完治しなくても、元気がでてくるはずです。

ほとんどの人は、なんらかの病気になります。生涯病気がなく健康な人はほんのわずかです。ですから、大切なのは自分の病気や加齢と上手に付き合うことです。高齢者は治らない病気とつきあいながら、病気があっても元気に過ごしたいものです。そのために重要なのが、食習慣です。習慣は変えようと思っても急に変えることはできません。高齢になればなおさらです。高齢になった時の正しい食習慣のために、50代、60代のうちからの習慣づけが大切です。



健康な人が自分にあった栄養バランスを知る

栄養ケア・ステーションの取り組み


―「バランスの取れた食事、適切な栄養」とは?


栄養が大事だということはだれでも知っています。ですから自分の栄養状態がどうか、何が不足して何が過剰なのかを明らかにしてあげることが大事です。

健康や栄養の情報は、正しいか正しくないかではなく、その人に合っているか合っていないかなのです。その人にとって健康効果があるもの、栄養の過不足を見つけることが重要です。

病気になれば病院で管理栄養士による栄養指導を受けられますが、健康な人が栄養指導を受ける仕組みは少ないことに加えて、あらためて大人が栄養について学ぶ機会はほとんどありません。そのためテレビや雑誌でこの食品や栄養が体に良いとなると、スーパーの棚から商品がなくなる事態になるのです。体格や体質、健康状態や活動量は一人ひとり異なるため、適切な栄養バランスも一人ひとり違うはずなのに、おかしな話です。

日本栄養士会では、仮に持病があったとしても、元気に暮らす人の栄養相談の場として、栄養ケア・ステーションを展開しています。

各都道府県の栄養士会だけでなく、団地の一角やコンビニエンスストア内に設置されている例もあり、日常生活の中でふらりと立ち寄り、日頃の食事で困っていることや疑問に思っていることを気軽に相談できる場所です。地域ごとに栄養講演会や調理教室などを行っているところもあります。写真は店舗内で展開されている栄養ケア・ステーションです。



普通の人が気軽に利用できる健康の場づくりが重要


―最後に、だれでもできる健康づくりに重要なことを教えてください。


「卓球珈琲(カフェ)」と「栄養ケア・ステーション」は、生活の中に健康づくりを組み込むという共通点があります。健康意識が高い人のためでなく、普通の人が住み慣れた環境で、ふらっと立ち寄って卓球や栄養相談ができる場所が増えれば、健康で幸せな社会が実現できます。


 

中村 丁次(なかむら ていじ)先生

神奈川県立保健福祉大学学長、公益社団法人日本栄養士会会長


1972年徳島大学医学部栄養学科卒、1985年医学博士(東京大学)。


聖マリアンナ医科大学病院を経て、2003年から本学教授、2011年から本学学長に就任。公益社団法人日本栄養士会会長、日本栄養学教育学会理事長、日本臨床栄養学会名誉会員、消費者庁「特別用途食品の許可等に関する委員会」委員長、日本健康会議実行委員、「東京栄養サミット2020」に係る有識者会議座長。




 

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