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整形外科・リハ医の視点1 卓球は、日本人にむいている
「健康卓球」の賛同者である整形外科医の佐藤務先生(稲毛病院整形外科・リハビリテーション科/健康支援科部長)が、なぜ、日本人が世代を問わず卓球に惹かれるのかを紐解きます。
佐藤 務(さとう つとむ)先生
稲毛病院 整形外科・リハビリテーション科/健康支援科部長/地域連携室室長
ダンスの授業で膝痛はなぜ起こる?
膝が痛い、というと加齢のせいかと思いがちですが、中学校でダンスの授業が必修となり、若い人もちょっとしたことで膝を痛めることが増えてきました。
生まれた時からベッドと椅子で育ち、トイレも洋式で過ごしてきた人たちは、日常の中にしゃがんで立つ機会、膝を90度以上に曲げる動作がほとんどありません。
だから、脚がすらっとして、膝を守る筋肉がない。そういう人たちがダンスをしたら、必ず膝を痛めてしまうのです。
我々のからだの動かすことが出来るところには必ず関節があり、関節をまたいで骨同士をつなぎあわせている筋肉には関節を動かすだけでなく保護し守る役割もあります。
それなのに、筋肉が衰えた状態で必要以上に関節を動かしたら、関節を痛めてしまうのはあたりまえ。ダンスを始める前に、まずダンスに必要な膝を守る筋肉をつけることから始めなければいけないのです。
ウォーキングの前に必要なのは筋トレ
生活様式が変わったのは若い人だけではありません。昭和生まれの中高年も、生活様式の変化による筋肉の衰えがみられます。
中高年は、子どもの頃こそ畳の上の生活の中で自然と膝を深く曲げたり伸ばしたりする筋肉を使っていましたが、今ではほとんどの人がベッドや椅子や洋式トイレを使い、車やエレベータで移動して生活しています。だから、下半身の筋肉が衰えて足腰が弱くなってしまうのです。
だからといって、運動不足を解消するために、いきなり1日1万歩だの8千歩だのとウォーキングを始めると、関節に負担をかけて膝を痛める結果となってしまいます。全身の筋肉が衰えてきた中高年こそ、関節を守るための筋トレが必要なのです。
農耕民族にウォーキングは向いていない
もともと日本人は農耕民族として、長時間の農作業の中で必要な筋肉をつけ、家の中でもしゃがんで立つ動作を繰り返すことで、知らない間に筋トレを行ってきました。
ごはんを食べ、筋肉の収縮のためのエネルギー源となるグリコーゲンを筋肉に蓄えることで長い時間働けるからだをつくってきたのです。
生活習慣が欧米化した今でも、じつは農耕民族としての体質は変わっていません。その事実を無視して、欧米人の真似をしても、うまくいくはずがありません。
本来、健康づくりのための運動とは、昔は日常的に行ってきたけれど今の生活の中では実践していない動作を意識的に補うために始めるべきものです。
その観点からすると、ウォーキングは牧畜民族が行うべきものであって、農耕民族がまず行うものではありません。
私たち農耕民族に必要なのは、農作業に代わる運動、つまり筋トレです。筋肉があれば関節を守れ、糖分の代謝もできる。ふだんから筋トレをしていれば、糖質制限ダイエットなどは必要ないのです。
卓球の基本姿勢は農耕民族に向いている
卓球の基本姿勢は、脚を少し開いて両膝を軽く曲げ、少し腰を引いて背筋は丸めずに前かがみです。これは、からだを外に開くテニスなどと比べて、農耕民族である日本人の骨格に合っています。
また、床に落ちたボールをしゃがんで拾い、再び立ち上がる動作は、まさに農作業に代わる筋トレになります。他の球技に比べてからだへの負担が少なく、ボールを打ち合う動作以外でも適度な運動効果が期待できる点もお勧めです。
卓球の動きの中には、じつは日常動作につながるさまざまな動きが隠れているので、将来の転倒や骨折を防ぎ、健康長寿の実現にも役立ちます。次回は、その
理由について詳しくお話しします。
佐藤 務(さとう つとむ)先生
稲毛病院 整形外科・リハビリテーション科/健康支援科部長/地域連携室室長
1991年国立宮崎医科大学卒業。都内民間病院にて、内科・外科・整形外科・麻酔科・ペインクリニック・透析・漢方・鍼灸・救急・在宅医療と幅広い研修を積む。1995年より稲毛病院整形外科勤務、漢方肥満外来、ビタミン外来、健康支援科を併設し、治療だけでなく予防・ケア・看取りも含む総合医療を展開。
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